TS-590シリーズ取り扱い説明書

さまざまな機能を具現化する、32bit浮動小数点DSP。

IF段からのデジタル信号処理による高度なAGC制御

IF段もDSP。当社はTS-870でアマチュア機初のDSPによるIF AGC制御を実現。TS-590ではそのDSP技術をさらに発展させ、独自のIF AGC制御方式を開発しました。ルーフィングフィルターと最終IF通過帯域幅の隙間に存在する信号に対しても、そのレベルに応じて最適なAGC制御を行うことが可能。ルーフィングフィルターの帯域幅を意識することなく、常に最適な運用ができます。また、最終IF通過帯域(受信帯域)における目的信号のゲイン制御性能も大幅に向上。高級機にも匹敵するインバンドIMD(歪)特性を実現。新世代のケンウッドトーンで快適な受信が可能です。

多彩な混信除去/ノイズ除去機能

IFフィルター帯域可変

DSPフィルターの帯域を可変し、用途状況に応じた混信除去が可能です。SSB/AM/FMモードではスロープチューン、CW/FSK/SSB-DATA通信モードではWIDTH/SHIFT機能として動作します。

各モードにおける選択肢と初期値(初期値は太字)

  • SSBモード

    LOW CUT:0、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000Hz
    HI CUT:1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.4、4.0、5.0kHz

  • CWモード

    WIDTH:50、80、100、150、200、250、300、400、500、600、1000、1500、2000、2500Hz
    SHIFT:300Hz~1kHz(50Hzステップ)

  • SSB-DATA通信モード

    WIDTH:50、80、100、150、200、250、300、400、500、600、1000、1500、2000、2500Hz
    SHIFT:1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2210Hz

  • AMモード(LOW CUTはAFフィルター)

    OW CUT:0、100、200、300Hz
    HI CUT:2.5、3.0、4.0、5.0kHz

  • FSKモード

    WIDTH:250、500、1000、1500Hz

  • FMモード(AFフィルター)

    LOW CUT:0、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000Hz
    HI CUT:1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.4、4.0、5.0kHz

IFフィルターA/Bワンタッチ切り替え

DSPフィルターの帯域を可変し、用途状況に応じた混信除去が可能です。SSB/AM/FMモードではスロープチューン、CW/FSK/SSB-DATA通信モードではWIDTH/SHIFT機能として動作します。

IFオートノッチ機能*、マニュアルノッチ機能**

TS-590のノッチ機能はオート、マニュアル共にIFノッチ。強力な妨害信号をノッチで除去することにより、目的の微弱信号を浮かび上がらせる動作が可能です。IFオートノッチはノッチ周波数がビート周波数に追従して自動的に可変。ノッチ帯域はマニュアルでは調整できないほどシャープな特性です。マニュアルノッチはノッチ周波数を手動で可変できるとともに、減衰幅もノーマルとワイドの切り替えができるので、混信の状況に合わせた運用が可能です。

* SSBモードのみ動作

** SSB/CW/FSKモードで動作

デジタル/アナログ2方式を搭載したノイズブランカー機能(NB1/N)

弱ノイズに対する効果に定評があるアナログノイズブランカー(NB1)に加え、新開発のデジタルノイズブランカー(NB2)も搭載。ノイズの種類や受信状況に合わせて、最適な効果を持つノイズブランカーを選択できます。NB1では、ダウンコンバージョン時に1stルーフィングフィルター(NBフィルター)を通過したノイズがNB回路に供給されるため、受信帯域幅によらない安定したノイズ除去が可能です。NB2は新開発のエンベロープ追従方式で、アナログノイズブランカーが追従できないようなノイズに対して効果を発揮します。

DSPによるノイズリダクション機能(NR1/NR)

従来のNR1/NR2と2種類のノイズリダクション方式に加え、NR1では音声系モードでのノイズ除去に特化した新開発のスペクトル減算方式のノイズリダクションを搭載。各受信モードに最適なノイズリダクション方式が適用されます。

NR1

SSB弱信号の受信明瞭度改善を重視し、スペクトル減算型ノイズリダクションを新規開発。
32bit浮動小数点DSPの演算能力を生かすこの先端技術により、音質の劣化なくノイズに埋もれた目的信号を浮かび上がらせることが可能です。また、非音声系(CW/FSK)の受信モードでは、従来から定評のあるラインエンハンサー方式のノイズリダクションが動作します。どちらの方式もリダクション効果をスムーズに可変できます。

NR2(SPAC方式)

受信音から周期信号を抽出する独自のSPAC方式によるノイズリダクションが動作。SPAC方式では目的信号と同じ周波数の雑音も抑圧するためCW運用に効果的。相関時間を2ms~20msまで2msステップで10段階に選択可能です。(NR2はFM以外で動作)

ビートキャンセル機能(BC1/BC2)

IFオートノッチがひとつの強力なビートに効果的であるのに対して、ビートキャンセルは比較的弱い複数のビートに効果を発揮します。BC1は弱いビートや連続ビートに効果があり、BC2はCW信号のような断続するビートに効果があります。IFオートノッチと同時使用もできるため、さらに効果的なビート除去が可能です。(SSB/AM/FMで動作)